「ハリトヒト。マーケット/ハトマ」に行ってきました 3 がんと鍼灸

「ハリトヒト。マーケット/ハトマ」の
二人目の講演者は赤星未有希先生
彼女の話を直接聞くのも今回ハトマに行った目的の一つ。
身内と友人のがんが私が鍼灸師になるきっかけになったこともあり、
昔は緩和ケアに関わることに強く興味がありました。



ハリトヒト。赤星先生インタビュー

がんサバイバーである赤星先生ご自身のことについては
上記リンクのインタビューを読んだ方が正確なのでここでは省略。

学生の頃は志すものだけは熱かったのだけれども
がんと一口に言っても
場所も年齢も症状も治療法も違う、標準治療と言われるものも日進月歩で
刻々と変化している、となると
病院の医療現場と接する機会がない我々市井の一鍼灸師が
正確な知識なんて持ちようがないと今では思っています。
現実問題として、手を尽くしてありとあらゆる療法で取り組んだとしても
治らないものがあるのを実感してからは
鍼灸でがんを治せるかもしれない、もしくは緩和ケアに自分が貢献できないか、
という点に固執しなくなったし
以前より選択肢が増えてきて、果たしてがんになった方に施術をするのに
鍼灸師はどういうスタンスで臨むのが今求められているのか。
そこに関心がありました。

彼女の話を聞いてみて、私がやってきたことや心構えは
多分、求められていることとさほどずれてはいないと思えました。
もちろん、相手の期待通りに提供できているかどうかは別で
不用意な言葉で気づかずに相手を傷つけてしまったこともあっただろうし、
ある人には救いになる言葉がある人には真逆になることもあります。
私のようについついおしゃべりになってしまう人間には
施術そのものより会話のスキルが重要になってきます。
言葉選びには気をつけないといけませんが
たとえ同じ道は歩んだことがなくても寄り添おうとする、
来てくれた人に自分の信じる施術で真っ直ぐ取り組む、という
姿勢が大切ですね。
がんの標準治療に伴う副作用への対処療法としての鍼灸は有効とのことなので
自信を持ってやっていきたいと思います。
時々、重篤な状況の方に来ていただくこともありますが、
初対面ではなかなか突っ込んだ質問は難しいし
内容によってはご本人が口に出すこと自体、苦痛だと思っている場合もある。
鍼灸師の取り組み方としては、がんにフォーカスしすぎてはならない。
病気はその人のごく一部の部分だとして
他の疾患の方と同じように一個人として接することを大切にする。
がんを慢性疾患と同じように自然に受け入れ
QOL(生活の質)を上げることを目的とした施術をする、でいいのだと。
長患いをした人間が身内にいたり、現状 介護などをしていると
すんなり納得できますが
まだ学生だったり、周囲にすこぶる健康な人しか見当たらないと
こういう講演で当事者の方から話を聞く以外、
知見を広める機会がないでしょう。
若くしてがんサバイバーとして不特定多数の前で演者になるというのは
大変に勇気の要ることだったと思いますので
講演された赤星先生の勇気に頭が下がります。

この講演を聞いた人が他の十人に伝え、その十人からさらにまた次の人へ・・・
と輪を広げていけば
がんになった方々がより生きやすい社会へと繋がるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

Saori Takano

「ここに来て良かった!」と心から言っていただける治療室を目指しています。
鍼灸治療は人対人の相性が重要だと思っています。
来院するかどうか迷っている方は
ざっと眺めていただいて参考にしてくださいませ。